研究内容 | 薬品分析学 田中研究室


  • 生体分子構造・メカニズム

    ゲノムDNAに書き込まれた遺伝情報が発現する際には蛋白質とRNAがともに働いています。その過程では酵素機能を有したRNA分子(リボザイム)や、遺伝子の翻訳制御を行うRNA分子が関与しています。我々のグループではこのような生理機能を有したRNA分子がどのようにして機能を発揮しているのかを調べる研究を行っています。これらの機能性RNA分子は、蛋白質と同様に特異的三次元構造を形成して機能を発揮するため。機能性RNA分子の三次元構造を調べることでその生理機能発現機構を理解しようと試みています。

    DNA二重らせん分子内における金属を介した塩基対形成の構造研究

    ハンマーヘッド型リボザイムの金属イオン結合モチーフと二価金属イオン相互作用の研究

    遺伝子治療薬の開発と細胞内デリバリーシステムの研究

    損傷塩基修復酵素hOGG1による塩基除去反応機構の研究


  • ハンマーヘッド型リボザイムの金属イオン結合モチーフと二価金属イオン相互作用の研究

     

    Hammerhead Ribozymeは生理条件下で金属酵素と考えられており、金属との相互作用の研究はメカニズムの解明に不可欠である。Hammerhead Ribozymeの結晶構造解析の結果より、二価金属イオンと結合できるモチーフが見つかってきている。しかし、この二価金属結合モチーフが溶液中でも実際に機能しうるかどうかは確認されていない。そこで、溶液中でのこのモチーフの金属結合能等の溶液物性を明らかとすることを目的として、以下の実験を行った。金属結合モチーフとして必要最小限の塩基配列を含むRNAオリゴマー(GA10: rGGACGAGUCC)を化学合成した。次に、種々のMgCl2濃度でGA10のNMRスペクトル(1D 15N NMR, natural abundance 1H-13C HSQC, and 1H-31P HMQC NOESY spetctra)を測定し、1H, 15N, 13C, 31Pの化学シフト値の推移をモニターした。その結果、結晶構造から推定される二価金属結合部位(N7(G10.1), C8(G10.1), H8(G10.1), P(A9))のシグナルが選択的に摂動を受けたことより、1) 二価金属結合モチーフが溶液中でも実際に機能しうる、2モチーフはリボザイムの他の保存配列がなくても独立して機能しうる、ということが明らかとなった。

    次に結合した金属イオンが配位結合しているかどうかを詳細に検討した。ある時期、このモチーフに結合した金属イオンがHammerhead Ribozymeの活性中心の金属ではないかという仮説が提唱されたことがある。したがって、この金属イオンの配位子が全て水分子であるか、グアノシンの7位窒素原子が配位結合しているのかは、金属イオンの化学的性質(触媒活性の有無の評価)を知る上で必須の化学情報であった。その結果、金属イオン結合モチーフのグアノシン(G10.1)の7位窒素原子がCd(II)に配位結合していることが判った。その様な結論に至った理由は次の通りである。我々の実験で得られた金属イオン結合モチーフの15N NMRスペクトルの化学シフト値を過去のデータ(配位結合性化合物であるDMSO溶媒中でのグアノシン-Hg(II)複合体の15N NMR化学シフト値変化のデータ)と比較したところ、配位結合性化合物に相当する化学シフト値変化が見られたことがわかった。水溶液中で核酸-金属相互作用で配位結合と、配位水を介した水素結合による結合を区別した、世界で初めての研究例となった。

    関連論文

    Yoshiyuki Tanaka* and Kazunari Taira, Detection of RNA nucleobase metalation by NMR spectroscopy, Chemical Communications, (2005) 2069-2079.

    Yoshiyuki Tanaka*, Yasuhiro Kasai, Shunsuke Mochizuki, Akihiro Wakisaka, Eugene H. Morita, Chojiro Kojima, Atsushi Toyozawa, Yoshinori Kondo, Masumi Taki, Yasuomi Takagi, Atsushi Inoue, Kazuhiko Yamasaki and Kazunari Taira*, Nature of the chemical bond formed with the structural metal ion at the A9/G10.1 motif derived from hammerhead ribozymes, Journal of the American Chemical Society, 126, 744-752 (2004).

    Yoshiyuki Tanaka, Chojiro Kojima, Eugene H. Morita, Yasuhiro Kasai, Kazuhiko Yamasaki, Akira Ono, Masatsune Kainosho, and Kazunari Taira*, Identification of the Metal Ion Binding Site on an RNA Motif from Hammerhead Ribozyme using 15N-NMR Spectroscopy, Journal of the American Chemical Society, 124, 4595 -4601 (2002).

    Ken-ichi Suzumura, Koichi Yoshinari, Yoshiyuki Tanaka, Yasuomi Takagi, Yasuhiro Kasai, Masaki Warashina, Tomoko Kuwabara, Masaya Orita, and Kazunari Taira*, A Reappraisal, Based on 31P NMR, of the Direct Coordination of a Metal Ion with the Phosphoryl Oxygen at the Cleavage Site of a Hammerhead Ribozyme, Journal of the American Chemical Society, 124, 8230-8236 (2002).

    Yoshiyuki Tanaka, Eugene H. Morita, Hidenori Hayashi, Yasuhiro Kasai, Toshiyuki Tanaka, and Kazunari Taira*, Well-conserved tandem G-A pairs and the flanking C-G pair in hammerhead ribozymes are sufficient for capture of structurally and catalytically important metal ions, Journal of the American Chemical Society, 122, 11303-11310 (2000).

    Yoshiyuki Tanaka* and Kazunari Taira*, Detection of RNA metallation by heteronuclear multidimensional NMR spectroscopy, Recent Research Developments in Organic Chemistry, vol. 9, 93-118, Transworld Research Network, India (2005).



  • 天然物化学・有機合成

    中国の植物に含まれる有機天然物を網羅的に調べています。また新規天然物の構造決定、および、生物活性を有した有機天然物の合成を行っています。

    合成的手法を用いる天然物の相対および絶対配置に関する研究

    天然型・非天然型生理活性物質の合成

    天然有機化合物の単離・構造決定


  • 合成

    1. Smを用いる合成法の開発

    • 置換基を有するヒドリンダン骨格の合成
    • 置換基を有するデカリン骨格の合成とeremophilaneの合成への応用
    • 5員環環化法の開発とhirusutene合成への応用
    • 電気化学的方法論の開発
    • ボトリジアールの全合成

    2. オレフィンメタセシス反応の応用と限界,及びそれを用いた天然物合成

    • Verticillolの全合成
    • a,b-不飽和ラクトン類の合成とそれを応用した抗癌剤の合成
    • オレフィンメタセシスを用いる5-8-6-5員環を有する抗生物質YW3699の全合成
    • 大員環化合物の合成への応用ー14員環を目指して
    • 5~13員環合成への応用と限界
    • 7員環化合物の合成とそれを応用したsphenolobane型ジテルペンの全合成

    3. 天然物のキラル合成による絶対配置の決定

    • infusucatrienolのキラル合成とスペクトル的研究
    • sphenolobane型ジテルペンのキラル合成と絶対配置
    • crispatanolideのキラル合成

    4. キラル化合物の合成とCDスペクトルの解析

    • 2,2-二置換シクロヘキサノンのキラル合成とCD
    • 3,3-二置換シクロヘキサノンのキラル合成とCD
    • 17O NMRの応用とコンフォーメーション

    5. 生理活性物質の合成

    • a,b-不飽和ラクトン構造を有する抗癌剤の合成
    • カテキン系抗癌剤の合成
    • cyathane型ジテルペンの全合成
    • cryptoporic acid類の全合成

  • 天然物の探索

    1. ジテルペンの単離

    2. セスキテルペンの単離

    3. 芳香族化合物の単離

    4. アルカロイドの単離

    5. その他の化合物の単離

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